「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ免責特約は可能?

2022.10.03

 

瑕疵(かし)とは、欠陥や隠れた傷など目に見えない不具合のこと。不動産取引における「瑕疵担保責任」とは、物件に瑕疵があった場合、買主様は売主様に対して損害賠償責任や契約の解除などができると言うものです。物件を引き渡した後に、たとえば「雨漏りがした」「シロアリが出た」といった問題が生じた場合、引き渡しから3カ月間は「売主様が瑕疵担保責任を負う」のが民法上の義務でした。

 

民法改正で「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ

 

2017年に民法の改正案が成立し、2020年4月1日から改正民法が施行されました。これにより、従来の「瑕疵担保責任」の概念が消滅。新たに「契約不適合責任」の概念が追加されました。

 

契約不適合責任はその名の通り、物件が契約の内容に適合しない場合に売主様が負うべき責任を言います。瑕疵担保責任では、物件を現状のまま買主様に引き渡すのが売主様の責任で、瑕疵のない物件を引き渡すことまでは責任ではありませんでした。引き渡し後に瑕疵が見つかり、それが目に見えない、隠れた瑕疵であった場合、買主様が売主様に損害賠償を請求するのが主な流れでした。

 

しかし、契約不適合責任では、契約内容に合致した物件を買主様に引き渡すのが売主様の責任に。契約書に書かれていない不具合はすべて売主様の責任になります。逆に言えば、契約書にたとえば「雨漏りあり」と記載されていれば、引き渡し後に雨漏りがあっても売主様の責任は問われません。ポイントは「契約書に書かれていること」になります。

 

「瑕疵担保責任」に認められていた免責特約

 

実例でお話ししましょう。ある中古住宅の査定にお伺いしたところ、それは昭和52年(1977年)築の物件でした。ここまで古いと、買い手が見つかり物件を引き渡しても3カ月以内でなにかしら瑕疵が出るのは火を見るより明らか。そんな場合には、「引き渡した後に修繕費用が10万円、20万円とかかったら嫌ですよね。瑕疵担保責任免責という特約が付けられますから、それでいきませんか?」と売主様に提案していました。

 

免責の条件は、不動産会社と売主様の間で口頭ですり合わせればOK。販売図面等に「建物の瑕疵担保責任は免責とする」と明記すれば成立です。不動産会社は物件をレインズに登録する際、備考欄に「瑕疵担保責任免責」と付記。それを見れば他の不動産会社も「この物件は建物が相当古いんだな」とわかりますから、見込みのお客様に「この物件は引き渡し後に不具合が生じても売主様の保証はありません」と説明した上で案内するというのが暗黙のルールとなっていました。

 

ちなみに、大手の不動産会社では、免責の代わりに「瑕疵保険」を用意して「何かあったらこの保険で対応できますので」と売主様に説明していました。

 

契約不適合責任の免責特約で注意すべきこと

 

レアケースとして、築浅の物件にもかかわらず、レインズの備考欄に「瑕疵担保責任免責」と記載されているものがありました。この場合、住宅ローンが払えなくなって売却する「任意売却」のケースがほとんど。ローンが払えないのに物件の修繕費が捻出できるわけがないからです。もしくは、小さなお子様やペット、猫の多頭飼いなどで部屋の中が大変な状態になっているケースも。不動産会社はお客様を案内する前に「こんなに新しい物件なのに、なぜ免責なんですか?」と理由を確認するのが慣例でした。

 

瑕疵担保責任と契約不適合責任では相違点が少なくありませんが、どちらも「免責特約」が認められています。契約不適合責任では、免責事項の内容をすべて具体的に記載する必要があるので、この点が要注意です。

 

ご自身の物件を売却する場合、特に築25年以上経ってる場合には免責にすることをお勧めします。古い物件は、自分でリフォームしたい買主様が興味を示すからです。とは言え、免責にする代わりに売り出し価格を下げたり、逆に、他の不動産会社から値引きを多めに求められる場合もあることを覚えておいてください。なお、契約不適合責任免責は建物のみ。土地には適用できません。

 

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